特に男の老人

　

孤独な老人が寄ってくる

なぜかこちらに寄ってくる。

　ちょっと前に話題になった「ぶつかり男」のような挙動です。


　用もないのに接触してこようとする。

　アカの他人です。


　構って欲しいのでしょう。

　ぶつかりでもして「ああ失礼」なんて、言われればそれだけでも嬉しいのでしょう。




　孤独で何の役にも立たず、自分を律することもしてこなかった老人たちが、そうやって人込みに紛れようとしています。

　この厳しい時代、コロナ感染が拡大している今だからこそ分かります。


　いつまでもそうやって人込みを好んでいるのですから、コロナウィルスの保菌者だと私は思っています。



　こちらの目を見ることはありません。
　どこかうつろにしていて、そして、悲しみを目にたたえています。


　しかし同情などできるわけがない。

　あちらは人のことなどこれっぽっちも考えていないのですから。



　その、ないものねだりの心理は手に取るようにわかります。


　服装はそれほど汚らしくない。

　しかしどこか弱々しい印象にしている。

　そして突然立ち止まります。

　何かを探したり、思い至るような挙動をします。


　誰かとぶつかり、接触がしたいのです。


　棚を見ているわけでもありません。

　ただフラブラと店内を流すように歩いています。


　彼らは酒さえ飲まない。